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ドラマ『レイ・ドノヴァン ザ・フィクサー』

◇徒然

心理的要素が含まれる構成

最近観る米国ドラマでは、要所要所に心理学的要素が散りばめられているものが多いと感じます。

ドラマ自体は心理的なものを主題にはしていないのかもしれませんが
国民が観る人気ドラマに心理的な考えや場面が盛り込まれると、カウンセリングが人々により身近なものと感じられることでしょうね。

心理学が日本より50年先を行っていると言われる米国はやはりすごいなぁと思います。

最近観たこのドラマは、ジャンルとしては「サスペンス、ミステリー、ヒューマンドラマ」に入るようです。

フィクサーとは「後始末屋、もみ消し屋」のことで、大物人物の不祥事を後始末する仕事のようです。もちろんそのためには殺しもありで、ハードな内容となっています。

虐待を受けて育った子どもたちのその後

私が着目するのは主人公のレイを含めた4きょうだいが

母親の闘病への介護と死を経験
飲んだくれで根っからのクズな父親を持ち
さらに男児たちは神父から性的虐待を受けて

その心の傷を抱えたまま大人になっている点です。
ドノヴァン家の子どもたちは皆、複雑性PTSDを抱えていると思われます。

怒りを生きるバネにする

レイは4きょうだいの中では一人だけ大きな家や家族を持ち、豊かな暮らしをしており社会的な成功者のように見えます。

そのレイの成功を支えてきた原動力は

母親の死に際に立ち会うことなく浮気をしていた父への「怒り」であり
社会的弱者であるきょうだいたちを襲った神父をはじめとする社会への「怒り」です。

そのように「怒り」を成功への力に変えることを心理学では「昇華」という言いかたをします。
簡単にいうとバネにするということです。

昇華への対象は人によってさまざまあり、スポーツであったり、絵画、執筆などの芸術活動もあります。

感情を切り離して生きる

そんなふうに心の傷が社会的成功につながるのなら問題はないように思われますがそうではありません。

レイは家族への細やかな心の配慮を持てずに次第に周囲から孤立するようになります。

家族やきょうだいたちのことを心から大事にして、孤軍奮闘しているにも関わらず

表現の仕方がわからない
あるいは細やかさそのものを持ち合わせていないようにも感じます。

おそらく養育環境から考えると持つことができずに来たのでしょう。

心理ではスピリットオフと言ったりしますが、感情を心から追い出し切り離してしまうことで、感じないようにするのです。

辛すぎて持ったままではこの先を生きていけないことを子どもながらに察知して心がそのように作動します。

表面的にはレイのような人物は「やさしさがない人」のように周囲は感じます。

レイ自身はこんなに家族のために頑張っているのに理解してもらえないと孤独に陥り、家族は父親に対して愛しているのにお金だけを与えて仕事ばかりやっている人と思い、関係性が悪くなっていくのです。

カウンセリングを受ける場面も

レイはドラマ終盤で、精神科医のカウンセリングを受けますが楽になるまでには至らず終わりとなります。

日本の精神科医とは違い、自宅のリビングのようなゆったりとした落ち着く空間でゆっくりと話を聞いてくれるシーンは素晴らしいです。
それでも、深い心の傷は簡単には癒えないのだなぁと感じます。

レイがフィクサーとして仕事をする場面では、何度も激しい怒りが噴出します。

観ているものがそこまでしなくても…と感じるほどに相手を打ちのめしたり、もう死んでいるのにまだ攻撃を加えるのです。

フラッシュバックが起きている

それは複雑性PTSDによるフラッシュバックのようにも見えます。
こんなふうに、現状で起きていることに見合わないくらいに、より激しい感情が噴出することがよくある人はフラッシュバックのことが多いのです。

心理職の者としては

「お願い。誰かレイを救ってあげて」

と思わずにいられないドラマでした。

心が病んでいる方には刺激が強い内容のドラマかもしれません。
鑑賞される場合は十分にお気をつけください。
あるいは避けていただいた方がよいかもしれません。

こちらのドラマはHuluでシーズン7まで観れるようです。

問題が解決しない方は 銀座カウンセリングルーム こころね工房へどうぞ。お待ちしています。

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