複雑性PTSD
大きな交通事故や災害現場に遭遇したショックなどで発症する単回性のPTSDに対して、複雑性PTSDは毎日親から暴言を吐かれた、DVを日常的に見ていたなど長期に亘る心の傷を重ねた結果として生じるPTSDを指します。
専門家でも知らない人が多く、その理由としては診断マニュアルに記載がない、治療方法が確立されていない、症状が広範に亘ることから捉えづらいなどが考えられます。
一方で臨床現場では複雑性PTSDでは?と思われるクライエントの方は多くいらっしゃいます。
そのためセラピストがそのことに気づかずにカウンセリングを進めてもなかなか成果が出ない、という事態を招きます。
それらから、もしクライエントの方が「私は複雑性PTSDかもしれない」と思われたなら、しかるべき機関につながることが大事になります。
診断マニュアルに記載がない
少し専門的な話になりますが世界中の精神科医が使用している診断マニュアルは以下の2つです。
・DSM(現在は2016年に更新されたDSM5)アメリカ精神医学会出版
・ICD(現在は2019年に更新されたICD 11)世界保健機構出版
DSM5には複雑性PTSDという疾患名はまだ掲載されていません。
またICD 11には記載されましたが、日本語版はまだ出ておらず発刊はまだ先とのこと。そして治療方法がまだ記載されていないのです。
また複雑性PTSDについて書かれている本も少なく、昨今注目されるまでは検索をしてもヒットするのは論文か翻訳本でした。
海外ではすでに数十年前から取り上げられており、日本では精神科医の杉山登志郎先生がすでに複雑性PTSDに着目され、独自の治療法などを確立されていらっしゃいます。
クライエントさんが簡単に実践できる方法もあり、私も使用させていただいています。
以上のことから、専門的にも一般的にもなかなか浸透しないのでしょう。
複雑性PTSDは愛着障害とセット
複雑性PTSDの症状を簡単に紹介することはとても難しいです。と言うのも広汎に亘る疾患の症状が絡むためです。
発症の要因として、愛着障害がほぼセットで存在すると言われています。
愛着障害は子どもにつけられる診断名ですが、大人になっても苦しんでいる方は多くいらっしゃいます。
大人の症状を簡単に説明すると、なんらかの理由で養育段階に親御さんからの愛情をうまく受けられず大人になった場合、
不安が強い、
感情の起伏が激しい、
人を信用できない、
あるいは信用し過ぎる、
人との距離感が適度に保てない、
自信がない、
などの症状が出ます。
ところがこれらは発達障害の症状とよく似ており精神科医でも見分けがつかないことが多いのです。
愛着障害は児童虐待とセット
また愛着障害は児童虐待とセットで存在する確率がとても多いと言われています。
つまり、子どもに愛情を上手に注げない親御さんは、自らもそのような親に育てられた可能性が高く、愛情を注ぐ方法を知らない方が多いと推定されます。
それらのジレンマや自らの未処置の心の傷から、子どもへの虐待に発展する可能性が高くなるのです。
また心の傷つきが大きいと、
感情の起伏が激しく
怒りのコンロトールできない、
実際に起こっていること以上に過大に物事を捉える、
被害的である、
不安が強い・・・
などのパーソナリティ障害のような症状が出る場合があります。
様々な症状に二次的症状が加わる
このように一人の人の中に発達障害、被虐待児としての後遺症、愛着障害、パーソナリティ障害の症状が入り込んでしまう可能性があるのです。
またさらにそこから二次的にうつ病や双極性障害などを患うとその症状が複雑性PTSDの上に覆い被さってしまい、いったい何の疾患の症状なのか?を知ることをいっそう難しくさせます。
当ルームにいらっしゃるクライエントさんに、
「主治医に被虐待経験があることを伝えましたか?」
と伺うと、ほとんどの方が
「聞かれていないので言っていない。今の症状に関係あるんですか?」
と答えられます。
このように、クライエントさんご自身が何十年も前に起こった事が今の自分に影響を与えているとの自覚を持つことは困難であり、
むしろ辛かったことを心の隅に追いやり記憶から消そうとされる場合の方が多く、そのことがより一層診断を難しくしている現状があるようです。
もし、あなたがぼんやりとでも過去に親御さんから辛いことを言われた、自分に自信が持てないと、思い当たるならそれをぜひ複雑性PTSDを扱っている機関に相談していただきたいと思います。
問題が解決しない方は 銀座カウンセリングルームこころね工房 へどうぞ。お待ちしています。
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