カウンセラーとしての倫理規定の一つに、通常、カウンセラーはクライエントさんに個人的な情報を提供しないという原則があります。
こうしたルールが設けられている理由についてご説明します。
カウンセラーは自己開示しない
個人情報とは、出身地、思想、宗教、趣味、家族構成など、さまざまな要素が含まれます。
過去に、クライエントさんから私たちカウンセラーが個人的な情報を共有しないことに対する不満の声がありました。
確かに、クライエントさんから提出された問診票には個人情報が含まれていますので、なぜカウンセラー側が情報を提供しないのか疑問に思われることも理解できます。
これは、友人関係においても通じる秘密主義のように感じられるかもしれませんが、カウンセラーが情報を共有しない理由があります。
情報がカウンセリングの妨げになる可能性がある
例えば、クライエントさんから好きな野球チームを尋ねられた場合、
私がタイガースを好きだと答えると、もし相手がタイガースのファンであれば急に親近感が増して、会話がカウンセリングの目的から逸れてしまう可能性があります。
逆に、私がジャイアンツを好きだと答えると、相手がタイガースのファンであれば、拒否感を抱かれる可能性があります。
いずれにしてもこれらの会話はカウンセリングの進行を妨げる可能性があるため、控える必要があります。
ただし、緊張の高いクライエントさんや自分の気持ちを表現することに抵抗がある場合などには、あえてクライエントさんの趣味を話題にしてリラックスしていただくことはあります。
不要なバイヤスになるかもしれない
さらに例を挙げると、子どもがいないことで苦しんでいるクライエントさんに、
苦しんでいるとは知らずに私が不用意に子どもの話題を提供してしまうと、クライエントさんが傷つく可能性があります。
同様に、動物が大嫌いな方にペットの話をすることや、
離婚に悩んでいる方に家族団欒の話をすることも避ける必要があります。
これらのトピックは、クライエントさんの気持ちに対するバイアスを生み出し、カウンセリングの効果を損なう可能性があるのです。
自己開示がカウンセリングの助けになる場合もある
カウンセラーは、クライエントさんが自己発見を行い、内面を映し出す鏡として機能します。
そのため、カウンセラーが個人的な話題を提供することは避けるべきです。
ただし、場合によっては、カウンセラーの自己開示がカウンセリングの助けになる場合もあります。
私自身もこれまでに一度だけ、クライエントさんとの関係にプラスの影響を与えると感じた時に、自己開示を行いました。
しかし、その際はクライエントさんに倫理規定の説明をして了解を得てから、簡潔に話しました。
質問の意図を理解して良い方向への転機にする
私の場合はカウンセリング中にクライエントさんから個人的なことを聞かれた時に、倫理規定を伝えた上で、
なぜそのことに興味を持ったのか、
何か気になることがあるのかを伺うようにしています。
なぜならクライエントさんからの自己開示要求の中には、カウンセラーへの依存の気持ちが含まれていたり、母親を慕うような感情を抱いていることがあるからです。
依存があったり、転移という防衛機制が働いているなら、カウンセラーはそのことに気づきカウンセリングが良い方向へ向かう転機にする必要があります。
このようにカウンセリングは、クライエントさんとカウンセラーが共同作業でクライエントさんの内面の気づきを深め、成長を促すプロセスなのです。
そのため、カウンセラーの自己開示はあえてしないのです。
問題が解決しない方は 銀座カウンセリングルーム こころね工房へどうぞ。お待ちしています。