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愛着とトラウマはどこで育まれるのか ―『普通の家庭』に潜む見えない負荷」②

トラウマ

【 本記事は全3回の連載です 】

複雑性PTSDの背景には、誰の目にも明らかな虐待や、極端な出来事が必ずしも存在するとは限りません。 むしろ、「どこにでもありそうな家庭」
「熱心で、特に問題のなさそうな親子関係」
の中で、知らず知らずのうちに形成されていくケースも少なくないのです。

複雑性PTSDの背景要因

複雑性PTSDの背景要因としては、主に次のようなものが挙げられます。

  • 家庭環境・養育態度
  • 無自覚な心理的虐待
  • 一見すると「普通の家庭」に見えるケース

これらはいずれも、外からは問題が見えにくいという共通点があります。

家庭環境・養育態度

家庭環境は、子どもの心の発達に大きな影響を与えます。一般に、両親が揃っている家庭よりも、養育者が一人の場合のほうがリスクが高くなる傾向があります。

また、過保護・放任・無関心といった極端な養育態度も、複雑性PTSDの背景要因となり得ます。

そのほかにも、以下のような状況が重なることで、子どもは慢性的な緊張状態に置かれやすくなります。

  • 極度の経済的困窮
  • 両親が非常に多忙で情緒的な関わりが少ない
  • 家族内に重い病気や介護が必要な人がいる
  • 夫婦関係が不安定、あるいは対立が多い
  • きょうだい間での差別的な扱い(男児や末っ子を特別扱いする等)

これらは必ずしも「虐待」として認識されるものではありませんが、子どもにとっては安心感を得にくい環境となることがあります。

無自覚な心理的虐待

無自覚な心理的虐待は、「子どものためを思って」という善意の中に潜んでいることが多くあります。

たとえば、「あなたのためを思って言っているのよ」という言葉の裏で、実際には親の価値観や期待する方向へと子どもを誘導しているケースは少なくありません。

親御さん自身も同様の養育を受けて育っている場合、それが不適切であるという自覚を持つことは非常に難しいものです。

このような環境で育つと、子どもは「自分で考え、選択し、行動する」という経験を十分に積まないまま大人になります。

その結果、周囲からは品行方正で問題のない大人に見える一方で、「自分が本当に望んでいるものがわからない」「何を選べばよいのかわからない」といった深い苦しさを抱えることになります。

実際、こうした悩みを訴えて来談されるクライエントさんは少なくありません。

「普通の家庭」に見えるケース(具体例)

無自覚な心理的虐待は、次のような日常的な関わりの中に表れます。

  • 次から次へと、やるべきことや課題を提示される
  • 親の理想とする子育て像を暗に示し、それに沿うよう誘導される
    (例:公立より私立がよい、習い事はこれが向いている、など)
  • 友人関係、服装、持ち物について直接指示されなくても、常に親の顔色をうかがう関係性ができている
  • 夫婦関係や祖父母との関係、職場での不満を表に出さず、子どもへの愚痴で発散してしまう
  • 生活上のルール(ゲームの時間など)を守れなかった際、「正論だから」と強く叱責し、子どもが立ち直れないほど追い詰めてしまう

これらはいずれも「よくある家庭の風景」として見過ごされがちですが、積み重なることで子どもの自己肯定感や安全感を大きく損なう可能性があります。

なぜ本人も周囲も気づきにくいのか

たとえば家庭環境に問題があったとしても、それが外から見えにくいことは少なくありません。仮に夫婦不仲であっても、家庭内の事情は外に出さないよう取り繕うのが一般的ですし、嫁姑問題なども同様です。

また、無自覚な心理的虐待の場合、親自身が同じような養育を受けて育っていると、「自分がしていることが間違っている」という認識を持つことは非常に困難です。さらに大きな理由として、周囲からは「熱心で良い親」と映ってしまう点が挙げられます。

実際、このような親御さんは、学校の教師から見ても協力的で、理想的な保護者と評価されることが少なくありません。

ここで重要なのは、親の行動そのものが必ずしも間違っているわけではないという点です。では、いったい何が問題なのでしょうか。

具体例:A家とB家の場合

A家の場合


子どもが慕っている従兄弟が、ある私立中学校で活躍している姿を見て、「自分も同じ中学校に行きたい」と言い出しました。両親は、子ども本人の意思を尊重し、「行きたいのであれば応援しよう」と話し合い、塾に通わせるための教育費を工面し、送迎も交代で行うなど、協力的に支えています。

B家の場合


地域的に中学受験をする家庭が多く、父親自身も受験経験者です。そのため「子どもも同じ道を進むべきだ」と考え、幼い頃から受験について言い聞かせてきました。

子どもは当初それを受け入れていましたが、高学年になるにつれ「友だちと同じ公立中学に進みたい」と言い出します。

しかし親は、「お前が受験すると言ったから、高い塾代を払ってきたのだ」と主張し、譲ろうとしません。

「子どもの意思?」なのか「親の意思?」なのか

両者は一見すると、どちらも子どもの教育に熱心な親に見えます。
決定的な違いは、A家が「子どもの意思」を起点にしているのに対し、B家は「親の意思」が中心となっている点です。

しかし、この違いは周囲からはほとんど分かりません。多くの場合、当事者である親子自身も、その関係性の中に問題が潜んでいることに気づかないまま進んでしまうのです。

こうした関係性の影響は、子ども時代だけで終わるわけではありません。
次回は、大人になってから現れる心身への影響と、診断の難しさについてお話しします。

※全3回シリーズ「前回はこちら

問題が解決しない方は 銀座カウンセリングルーム こころね工房へどうぞ。お待ちしています。

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